EUC(エンドユーザー・コンピューティング)とは

今、情報システム部門は一つの大きな転機を迎えようとしていると思います。
それがEUCです。
この言葉自体は古くからある言葉なのですが、以下の2点から改めてこの考え方について、真面目に考えないといけない局面に来ていると思います。

1.ITというものが会社のほぼすべての業務に深く浸透し始めている
2.コロナウィルスの影響でテレワークが浸透し、従業員に対し、強制的にITリテラシーの向上が求められている。

今まで、いわゆるユーザーといわれている人たちは
社内SEから提供される新しい機能やサービスについて
その使い方だけを聞いて、業務で使うというスタンスでよかったのですが、
ここにきて上の2つの理由から、自分自身もITについて、ある程度理解をしていかなくてはいけない時代になってきています。

特に2番目の理由は大きいです。
コロナによって、どうしても現場に出ないといけない職種以外は
半強制的にリモートワークの導入がすすめられたと思います。
今まではパソコンやネットワークの事なんて気にしなくてよかったのに
突然、
「家のわいふぁいにつなぐ?」
「ぶいぴーえぬ?」
「プリンタつなげるってどうしたらいいの?」
「え?領収書ってスキャン?するの?」
等々、様々な問題に直面した人も多かったはず。

今まで社内SEはある程度限られたユーザーに向けてシステムの導入を行っていました
が、それにしても使い方を教えたり、マニュアルを作ったり、質問を受けたりと
相当な労力を費やしてユーザーに対して落とし込みをしてきました。
それが、コロナウィルスを起因とする一斉リモートワーク導入のせいで
その対象は一気に全社員となり、しかも今までのように、ある程度時間をかけてユーザーに落とし込みをするような暇はない
という状況に突然なってしまいました。

ユーザーも新しい事をいきなり短期間で覚えないといけない苦労をしましたが
社内SEもまた、膨大な量のユーザー(しかもITの知識レベルは千差万別)に対して、説明資料を超短納期で作り、これまた膨大に寄せられる質問に対応したりと相当な苦労をしたはずです。

こういった混乱を経た結果、企業が再び持ち出してきたのがEUCという考え方です。
これは平たく言うと、

業務に特化したシステム以外、専門性の高いシステム以外、つまり利用者が不特定多数にわたるような汎用的なITシステムに関しては、もう自分たちで勉強して、自分たちで使いこなしてください。情報システム部門としてはシステムが使えるということは保証しますが、その使い方までは教えません。

という事です。

ここだけ聞くと過負荷がかかった結果、仕事を投げたと思われがちですが
実態はそうではありません。
勿論、情報システム部門が言い出したわけでもなく、あくまで企業の方針として打ち出されたものです。

これは、テレワークが拡大した結果、今まで社内SEが相手にしていた「ユーザー」の範囲が急拡大して、今の人員ではとても賄えないほどの範囲になったのが原因です。
この急拡大したユーザーすべてに対して、従来と変わらないサービスを提供しようと思ったら、情報システム部門の人員を今までの数倍も膨らませないといけなくなり、固定費が爆増する。そうなるともはや、間接部門として情報システム部を持っているのか、会社のメインの仕事がシステムインテグレーターなのかわからなくなってしまう。
という至極もっともな理由が根底にあります。

冒頭に述べたEUCという考え方を社内SE目線から見ると
1.ITというものが会社のほぼすべての業務に深く浸透し始めている
➡あらゆる業務にITが浸透し、社内SEの守備範囲は拡大しつつあり、人員不足が懸念されつつあったが、今まではそのターゲットを絞り込んで順番に対応をして、なんとか回していた。ここまでであればなんとか回っていた。

2.コロナウィルスの影響でテレワークが浸透し、従業員に対し、強制的にITリテラシーの向上が求められている。
➡しかし、今ある手持ちの人員で、順番に対処していくという事が許されなくなり、全従業員に対し、一気に対応をしないといけない状況になった。

となったわけです。
そして、これにより当然たくさんの問題が巻き起こります。
まずは当然

いきなり、そんなこと言われてもITなんてわかりません

というユーザーの叫びです。
状況はわかったからといって、いきなりユーザーがITに詳しくなるわけはありません。
その結果、大多数の人が置いてけぼりを食らい、業務が麻痺する
という事が起こります。
こうなるとついていけない人達は、ITに対して融和姿勢ではなく
一旦、業務を回すために、一気にアナログに走ったりする危険性があります。
これを防ぐために社内SEはまた仕事を抱えてしまい、さらなる過負荷を招く危険性があります。

そして次に起こるのはシャドーITの氾濫です。
自分たちで何とかしてくださいと言っている以上、もはやシャドーではないですね。
ただ、社内SEの管理の外に存在するITという意味では同じです。
シャドーITのデメリットは前の記事で書きました。

実はEUCとシャドーITは切っても切れない関係です。
EUCは上に述べた通りで端的に言うと「自分たちで何とかしてください」
シャドーITは「勝手なもの作るな」
ですから、それは当然相反します。

そして、これが今最も大きな問題になっています。
これに対して、明確な回答を出している会社はまだいないのではないでしょうか。
EUCとシャドーITを両立させようと思ったら、以下のような主張になってしまいます。

間接部門としての情報システム部門を無制限に増やしていくわけにはいかないから、自分たちで何とかしてください。しかし、勝手に作ったものの面倒は自分たちで見てください。
更に言うと、それに依存して仕事が回らないような状況は避けてください。それに関しても情報システム部門は請け負えません。

これは今の日本の企業では容易には受け入れがたいと思います。
しかし、この無理難題に対してなんらかの解決策を出せなければ、これからの時代に対応できなくなります。

今時点で考えられる答えは大きく二つだと思っています。

1つ目は、
EUCを推進、対応できない人は「対応できない人ができる仕事」に回していく。同時に実力主義の人事制度を導入する。つまりITに適応できる人とできない人で峻別していく。

2つ目は、
内製化という名目のもと、情報システム部門の人員を急拡大する。

1つ目に関しては、そもそも現状の人事制度をなんとかしなければという課題意識から始めようとしている会社もいるかもしれませんね。
ただ、これは今までの日本の人事制度の根幹にかかわる部分なので、相当にハードルの高い部分です。
この記事の問題とはまた別の大きな問題とかぶってしまっているだけに、難易度が跳ね上がります。

そして2つ目、この2つ目に舵を切っている会社はチラホラ出てきたように見えます。
ただ、「内製化」と一言に言ってもこれも難しい話で過去の記事にも書いています。

一言でいうと、内製化の規模感によるけど
中途半端な規模感では期待した効果が得られないし、
規模を大きくすると、固定費が爆増する
というのが問題という話になります。

結局、内製化するといって、社内SEを増やしていたら
EUCの考え方とこれまた相反してしまいます。
なので、これもまた難しい話になってしまいますね。

正直なところ、現時点で尤もらしい解はどこの会社も出せていない
というのが現状だと思います。
これに対してよい答えが出れば、また別記事で上げてみたいと思います。

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