システム開発の内製化について その1

まず、前提として私は内製化についてはあまり肯定的ではありません。
ここでいう内製化とは、正社員としてプログラマーを抱えて、自社の人間で開発自体を行う事を言っています。

システム開発を内製化する目的は
・このご時世、何をするにしてもシステム開発は必要にならざるを得ない。
その度にコンサルやSIベンダーにお金を支払っていくのはバカバカしいから、内部にシステム開発部隊を作って、コストを抑えよう
という考えですね。

これに対し、私は内製化はコスト削減にはならない
と思っています。
その理由は以下のものです。

①内製化によるコスト削減のメリットが最も現れるのは、システム導入時であり、運用保守のフェーズに入るとコストメリットが表れにくい。
②システム導入よりも、運用保守の期間の方がはるかに長い。
③コストメリットの出る、システムの導入プロジェクトは絶え間なく企業内で発生するものではない。

つまり、システムのライフサイクルのうち、内製化によるコストメリットの出やすい部分は一部分でしかないのにも関わらず、多額の人件費を抱えることになる為、よくてトントン。
それどころか、不景気になった場合のコスト削減が容易ではなくなるリスクを抱え込むということになると思います。
※景気が悪く、システム投資をいったん控えようと思っても、人件費は掛かり続ける。

実際に、システム開発ができるほどの人員を抱えようと思うと、それはもはやシステム会社を社内に抱えることと≒になります。
一昔前、企業は社内の情報システム部をシステム子会社に移管させていましたが、それはつまり

本社の人件費として抱えたくなく、いざとなれば「自分たちの食い扶持は自分たちで稼ぎなさい。以上」としたいがため

だったはずです。
そもそも、「システム子会社は社内SE(情報システム部門)の代わりにはなりえない」とも思っていますが、その理由は以下の記事を読んでみてください。
システム子会社が社内SEの代わりになりえない理由
つまり、過去に社内にシステム開発のコストを抱えるのはリスクだと判断したにもかかわらず、今度はそこから逆行しようとしているわけです。

確かに企業におけるシステムの重要性は一昔前に比べると、比較にならないほど上がっていますが、上記①~③の事実は何も変わっていないはずです。

にも関わらず、この思考を転換させる理由は少なくとも実際に社内SEとして働いている中で感じたことはありませんし、なぜそのような話が取り上げられるのか?
論理的な理由が全く見当たらないというのが正直な思いです。
そんなことをしても

1.不景気到来
2.固定費削減
3.外出しできる部門を外注化
4.システムの重要性が高まり、社内システム部門充実化-今ここ-
5.内製化
6.1.に戻る

の繰り返しだと思います。
5.に踏み切るのであれば過去の経緯を踏まえ、尤もらしい理由が必要だと思います。
例えば米GEのようにですね。

また、これらの他にも内製化を肯定しづらい理由として
・IT技術の進化・変化のスピードは、他の業種では考えられないほど早く、その技術の変化を企業の内部にいる状態(本業がSIerでない状態)でキャッチアップするのは不可能。
という理由や、
・ITと一口に言っても、その守備範囲は広くその全てをカバーしきることは実質的に不可能
というものもあります。
詳細は別記事で書くとして、わざわざ社内にシステム部門を抱えて、多額の人件費を計上した挙げ句、時代遅れの技術を導入していては、本末転倒ですし、カバーしきれないから結局外注します。も意味がありません。

こういった理由から、内製化と言うことに対して、懐疑的な思いを抱いているわけです。

システムの重要性は確かに高まっていますが、それに伴いシステムの守備範囲も恐ろしく拡大している中、「内製化」と一言で言っても、そうそう容易な話ではない。
少なくともマンパワーとして拡充すればいいというものではない、ということをよくよく踏まえた上で舵を切るべきだと思いますし、大きな経営判断になるわけですから、こういった事柄に関して、きちんと経営陣に情報提供できるような社内SEであってほしいと思います。

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