社内SEとSier、コンサルティングファームの違いは?

社内SEとSier、コンサルティングファーム(以下、コンサル)というのは同じIT業界にいてもその毛色はかなり違います。
(ちなみにここではコンサルティングファームというのはITコンサルのことを言っています。)

特に社内SEとコンサルは、かなり違います。
同じプロジェクトにいるだけで役割と目的が両極端にいるイメージです。
一方、Sierはその間に位置するという感じなので、Sierから社内SEになったり、コンサルになったりはそこまでハードルは高くないですが、
・社内SEからコンサルに転職
とか
・コンサルから社内SEに転職
は結構ハードルは高いです。

ここでいう「ハードルが高い」は転職できるか否かというよりも、転職できたとしてモノになるか?という意味です。

コンサルから社内SEへの転職自体は行けると思います。
「コンサルにいました」ということ自体が、「仕事できそう」につながる経営者や採用担当者が多いからです。

ただし、上に述べたように、その役割はかなり違うので実際に働き始めると
採用した側は「あれ?もっと優秀なんじゃないの?」となることも多いし
採用された側も「え?なにこれ、思ったのと全然違う」ということになりがちです。
これはどちらかがいいというわけではなく、
ものすごく切れ味の良いハサミで釘を打とうとするかのように、目的と用途が食い違っているからです。

では、具体的に何がどう違うのか?ですが

社内SEは企業の一部であり、コンサルはスペシャリストにサービスを提供するスペシャリストであり、Sierはその中間に位置する

という違いになります。

もう少し掘り下げると
まず、立場が違います。
社内SEはあくまで企業の一部です。ITソリューションを売るというのが仕事ではなく、自社の課題を解決するのが仕事です。
コンサルはITソリューション(ITの製品)を売ること自体が仕事です。
SierはITソリューションを売ることだけではなく、役務(技術力)を提供することもあります。形を問わず、問題解決の手段を提供するのが仕事です。

ですので

サービスを提供する相手も違います。

社内SEがサービスを提供する相手は、その企業で仕事をする仲間達
いわゆるエンドユーザーといわれる、本当にそのシステムを利用する人たちです。
基本的にはITに明るくない人達です。
コンサルがサービスを提供する相手は企業の社内SEです
同じくITを仕事とする、同業者です。
基本的にITが何か?について理解できている人たちです。
そしてSierがサービスを提供する相手は
企業の社内SEのこともあれば、エンドユーザーであることもあり。
これは社内SEに対してサービスを提供する契約の時もあれば、社内SEの一部となってエンドユーザーの相手をすることもあるからです。

また、
問題解決のソリューションの選択肢も違います。

社内SEは自社の課題を解決するソリューションを、その規模の大小を問わず、市場から探し出さなくてはいけません。予算にも当然限りがあるので、その範囲の中で最適解を出す必要があります。
コンサルは自身の単価が高いため、取り扱うのはある一定以上の規模のものになります。
相手が抱えている課題を解決するために市場にある様々なソリューションから探し出すというよりも手持ちのソリューションから適合しそうなものを提供します。また発注側の予算に合わせてソリューションを提供ということもしません。自身の手持ちのソリューションに合致するものがなければ受注できないだけになります。
また、手持ちのソリューションもコンサルが必要となるような、取り扱いが難しく、旬な製品であることが多いです。
そしてSierはこれも中間のようになります。Sierはコンサルよりも手持ちのソリューションの数は少ないことが多いです。しかしながら、コンサルほど単価が高くない為、技術提供という形で社内SEの一部として働くことがある為、社内SEと同様の動きを共にすることがあります。

と、ここまでザックリ書いただけでも、サービスの提供相手も、問題解決の方法も社内SEとコンサルは向いている方向がかなり違いますし、Sierはその中間地点にいることがわかると思います。この違いというのは思いのほか大きいものです。

社内SEとしていかに優秀でもコンサルとして働くとなった場合、更にソリューションに対する深堀が必要になったり、今までユーザーにわかりやすく簡易に説明していた内容も、もっと専門性高く話す能力が求められることになります。
乱暴に言うと、

訳知り顔な人たちの中に混じって難しい話を難しそうに話す必要に迫られます。「は?そんなことも知らないの?何年この仕事やってるの?」といわれる可能性があるということです。

コンサルは逆ですね。
今まで社内SEや仲間内に話していた、話しっぷりではエンドユーザーには全く伝わらないので、話し方から資料の作り方まで根本的に見直す必要がありますし、問題解決についても、自分の手持ち以外のソリューションを探し出したり、時にはPoC(※)で自分が手を動かすということもしなくてはいけない。
乱暴に言うと、
素人にもわかるように、端折る部分は端折って、簡潔明快にわかりやすく伝える必要に迫られます。「は?何言ってるかわかないんだけど?もうちょっとわかりやすくしゃべれないの?プロなのに?」といわれるし、泥臭い仕事をする手間を惜しめないということです。

Sierは中間です。
エンドユーザーの相手も社内SEの相手も、時にはコンサルの相手もするため、TPOに合わせて話の内容も粒感も変えなくてはいけないですし、課題解決の踏み込み方もまちまちになります。その為、コンサルになるには、提案能力を磨く必要がありますし、社内SEになるには業務に深入りしていかなくてはいけません。
乱暴に言うと、
中途半端な立ち位置ですが、どちらにも寄せていける立ち場
になります。

私は中途半端というものがあまり好きではありませんが、こと自分がSEとしてのキャリアを積むといういう意味で、Sierという選択肢はとてもいい。というか一番だと思います。
上に書いてある通り、コンサルと社内SEは両極端にいるため、自身の特性も判断つかないままにどちらかに進んでしまうと、気が付いた時には、その反対側の職種に就くのが難しいということになってしまう可能性があるからです。
この記事ではSierを「中途半端な立ち位置」と書きましたが、それはあくまで社内SEとコンサルを線の両極端に置いた場合の話でSier自体は別の立場のITのプロであるということは間違いありません。Sierにはコンサルも社内SEもこなすスーパーマンが育つことはありますが、コンサルや社内SEにそういったスーパーマンが育つ可能性は低いです。

さて、ここまで書いたように一口に、社内SE、Sier、コンサルといっても役割はそれぞれ違いますし、特にコンサルと社内SEはかなり毛色が違うので、実は互換性はそこまで高くありません。
実際、コンサルから社内SEに転職したのちに、コンサルに出戻ってくるという話もよくあります。
少なくとも、自身が最終的に社内SEになろうと思っているのであれば、コンサルにおけるキャリアは、いざ社内SEになろうとしたときに、足枷になりうるということは意識しておいた方がいいと思います。

もちろん、人事や経営者は「元コンサル」っていう肩書が好きだろうから、一回入って肩書を手に入れておこうとか、当然コンサルでしか学べないこともあるので、上記の違いを踏まえた上でコンサルに入社してみるというのはとても良いと思います。
何も考えずに、とりあえずコンサルに入社するという選択をした場合、上記のような弊害に直面する可能性があるので、よく気を付けておいた方がいいと思います。

他にもいくつか理由はありますが、私は最初のキャリアにコンサルを選ぶというのはなかなかの冒険だなと個人的には思います。もちろん、逆もまた然りです。

社内SEになった場合、あくまで一般企業の一員ですから、実力で評価というよりも年功序列であったり、学歴であったりというようなことで区別がされがちです。そうなると本当に実力のある人は、この状況に耐えられなくなると思います。
「あー、コンサルの道を選べばよかったなぁ」
と思っても、社内SEとしての習慣が身についてしまっている状態だと、そのハードルは高くなると思います。

※PoCとは
PoC (Proof of Concept)ポックといわれることが多いです。平たく言うと、やりたいことがあって、なんとなく実現方法も見えているときに、いきなりそのソリューションの導入に走るのではなく、まずはすごく限られた範囲で、安い材料で試しにやってみるということです。いきなり家を建て始めるのではなく、まずは模型を作ってみるみたいな意味です。

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