カスタマーファーストはあるのか?

プロダクトアウトではなく、カスタマーファースト
この言葉がよく聞かれるようになって久しいですが、
じゃあ、IT会社(ITベンダー、SIerともいいます)は本当にカスタマーファーストって考えているか?
について書きます。

結論から書くと
ほぼ考えていない
です。

なので、事業会社の人はIT会社の言うカスタマーファーストなんて言葉を真に受けてはいけません(^^;
※この記事はちょっとうまく書くのが難しくて、何回も推敲しました(笑)

まず、この記事におけるプロダクトアウトとカスタマーファーストの定義から書いておくと。

【プロダクトアウト】

作ってる側の都合で売るという事です。
作ってる側が「こんだけいいものが作ったんだから、これを使わない手はないでしょう?」
という思いで世に出して、売っていく。
プロダクト(製品)ありき、これがプロダクトアウトです。

【カスタマーファースト】

お客様が欲しい物を用意して提供するという事です。
マーケットインという人もいます。
まず需要ありきという考え方。

このカスタマーファーストですが
実際にIT業界でも非常によく口にされます。
お客様の事を考えて、お客様の必要とするサービスや製品を用意する。
こういう意味で使われることが多いのですが
これが実際に口で言った通り実現できている会社はありません。

その理由もいくつかありますが
まずは、ITサービスを提供する会社にも様々なスタンスがあるので
それを整理してみます。

問屋さんのように他の会社のシステムを仕入れて、お客さんに提供する会社

上に書いたように、数限りなくあるシステムをすべて把握するのは無理なので、ある程度売れそうなものに的を絞ってラインナップを作り、あくまでその中で「お客様に適切なのはこれです」といって売ることになります。
ただこれって、よく考えるとプロダクトアウトとあまり変わりません。
システムを導入する際にコンサルティングサービスを付けます。などと言って
ちょっとカスタマーファーストっぽく言っていますが、結局そのコンサルティングの内容が
サービスに寄せていく内容だったりするので、つまりはプロダクトアウトです。

システムそのものを作っている会社

では、そもそもシステムを作っている会社なら、自社製品なので如何様にもいじれるし、実現できるのではないか?
というとそうでもありません。
確かに売り文句としては、開発元なのでお客様のどんな要望にも対応できます。
だったりしますが、当然すべてのお客様の要望を全部吸収することはできないので、大口顧客や要望の多い物だけ取り込む。という形になります。
となると、これもいわゆる中小企業からすると、システム標準に合わせていくことになるので、プロダクトアウトとさほど変わりません。
(システム標準に合わせること自体がよいか悪いかは状況によります。)

つまり、いわゆるサービスを提供するIT企業において
本当の意味でカスタマーファーストを実現している会社はないということになります。

もし、実現しようと思ったら
お客さんの業務内容をきちんとヒアリングして、
その業務にあっている、もしくはお客様の要望の実現に一役買うサービスを市場から探してきてお客様に提供する。

そういうスタンスで臨まないといけませんが
これをやっている企業は私が知る限り存在しません。

あくまで自社が取り扱っているサービスの範囲で、比較的適合するもの
(ひどいときは適合性など判別せず)
をピックアップして、勧めてくる。
そういうスタンスです。

以前、いわゆる業界では有名なコンサルティングファームからお声がけをいただいたのですが
その際に、その会社は
「これからは一つのシステムで会社のシステムをフォローする、いわゆる1プラットフォームで全て済ませるという時代ではないので、わが社もいろんなシステムの中でお客様に最も親和性の高い製品をピックアップして提供していく。そういう形でサービスのクオリティを上げていきたいと思っていて、その部門も作りました。」
と言っていたので、この記事で書いているように
「では、お客様の要望に応えられるようなソリューションがない場合は、市場から探してくる。ということも部門の仕事になっているのですか?」
と聞いたところ、
「いや、さすがにそれはできないのであらかじめ定められたラインナップから選んでいきます。
と言っていました。
ならば、ということでそのラインナップの内容を聞いたところ、誰もが知っているいわゆる業界スタンダードなラインナップで
何のことはない、今までその会社が取り扱っていた商品をカスタマーファーストという名のものに再編しただけの代物でした。

このように結局、カスタマーファーストというのは、営業手段の一つ(売り文句)でしかなく、本質的な意味でカスタマーファーストで臨んでいる会社はありません。
もちろん、それはそれで理由はあるのですが、この記事の主題ではないので別記事で書くとして。

カスタマーファーストという言葉はお客さんを向いて言っていることではなく、
自社や株主に向かって言っている言葉です。

「カスタマーファースト」と言う事で、売られる方は適切なものを提供してもらっていると思えるので売りやすいし、売れるから株主に良い心象を与えられる。
それ以上でもそれ以下でもありません。

では、誰が自社にとってのカスタマーファーストを本気で考えれるのか?
というとやはり社内SE(情報システム部門)になるわけです。

経営も自社の情報システム部門に対して
それを求めるべきですし、それができる人間を抱えないといけません。
そして、なぜそのシステムが自社にあっていると思ったのか?
選定をした理由は何なのか?
こういったことを社内SEにしっかり求めていかないといけません。

社内SE「しか」、自社のことを考えていないという事実
これを経営は常に認識しておくべきですし、
それができないのであれば、できる人間を抱える
誤ったシステムを導入することで、莫大な損失を被ることさえあるのですから
この社内SEの人材には、心を砕くべきだと思います。

コメント

このブログの人気の投稿

Stories 5話:今までの経緯を知らないまま、運用設計をする

社内のコミュニケーションを活性化!グループウェア導入のススメ

ITにどう向き合う?どう向き合ってもらう?