子会社への出向について

今回は出向について、特に親会社から子会社の社長としての出向について書いてみます。

親会社から子会社への出向
という話はよく聞くと思いますが
その形は様々ある中で、一番よくない、もしくは一番難しい
と思うのは社長の出向です。

これが何故難しいかというと
1.子会社の利益と親会社の利益が相反することがある
2.社長が定期的に変わることにより、子会社の方針が定まらない
この2点が特に大きな問題だと考えます。

1.に関して
親会社と子会社という関係上、両者間で取引があることが多いと思いますが
これを、
『親会社が子会社から仕入れをしている』
という単純な例で言うと
子会社の利益を増やしたければ、親会社に高く売りたい
親会社の利益を増やしたければ、子会社から安く買いたい
という利益の相反が発生するわけです。

このような状況が発生した際に方向性を決定づける社長が親会社から出向している場合、戻った後(出向解除)の事を考える人が多い為、後者の選択をしがちだという事が問題です。
これが続けば、子会社の利益は圧縮され続け、子会社にいる人間の環境はどんどん悪化していくということは容易に想像できるのですが、何故かこれを他人事のように捉える社長が多いのではないでしょうか。

子会社に社長として出向する場合、その人には大局的な視点を求められるはずですが、
往々にして、親会社における
キャリアの通過点
(社長を経験するという)ステップの一つ
というような、近視眼的な捉え方しかしない人が多いように思えます。
しかし、よくよく考えると(よく考えなくても?)上記のような事をしてしまうと、子会社の人材は流出し、会社のパフォーマンスは低下し、競合他社に負けてしまう事になります。
それはグループ全体としては不利益を招きこんでいることになるわけです。

親会社から子会社の出向で社長となるのであれば、むしろ連結の利益を意識することが出来る立場なので、グループとしてどうなのか?を考えないと、出向で社長をしている意味がありません。

にもかかわらず、何故か「俺は何々部長(親会社)とツーカーだから、話が通しやすいからな」というような、非常にちっぽけなメリットを声高にしゃべっている社長の多い事。
(そもそも親会社と交渉するのに、そんなコネがないとうまく行かないという時点で異常だとは思わないのでしょうか?身内のはずでは?)

出向で子会社が社長を迎えることのメリットは、
親会社の思惑を理解できている為、それを利用してグループとして利益の最大化を図ることが出来る
という事に他ならないと思うのですが、その利点を生かさず
ただ、自身のキャリアばかり考えている人が多いため、
子会社の力を落とし、グループの力を低下させている人が多いのが実態だと思います。

2.に関して
社長がコロコロ変わるというのは、1.の弊害がなくても問題を生じることがあります。
例えば、親会社からくる社長が全員、グループとしての利益を追求できる大局観のあるやり手ばかりだったとしても、

【前社長】これからはECが主役だ!!営業のやり方を根本的に変えなくては!!

とECに力を入れてはじめたので、人員もそこに投入をしたけれど

【次の社長】ECも大事だが、既存顧客をないがしろにしてはだめだ!!足を使う事を怠ってはならん!

と従来の営業に力を入れはじめたので、今度は営業に人を厚くしはじめたという事が起きたとします。

どちらの社長も、やり手ではあるので、ある程度の業績は残しましたが、次々と方向性が変わり、それに対応しようと力を尽くした内部は疲弊しきっているはずです。

社長自身は全力を尽くし、業績も出て、やりきった感はあるかもしれませんが
言っても、どこかのタイミングで社長業を終え、親会社に戻っていくわけです。
しかし子会社の人間は、次々にやってくるエネルギー満タンの人の相手をしないといけないわけですから、限界があります。

例えるなら、社長は100m×4の400mリレー
子会社の社員は400m走で戦っているようなものです。
社長の方はバトンを渡すのが非常に難しいですが、バトンがわたりさえすれば、100m全力で走り切ることができます。しかし、子会社の従業員は400mという距離を独力で走り切らないといけないのです。

こういった事を考えると
やはり社長はあくまで子会社の生え抜きに勤めさせ、親会社からの出向者は取締役の一人ぐらいに抑えておく方が賢明だと思います。

勿論、親会社自体がグループの利益最大化をモットーに
時には親会社の不利益になるようなことも決断できるような優秀な人間をしっかり厳選して子会社の社長として出向させているのであれば、話は別ですが、正直そんなことをやっている会社はないと思います。
だからこそ、出向する社長もそういうビジョンをもって赴任しないという事にもつながるのですが・・・・。

この本にも書いていますが
会社を経営する上で最も大事なのは理念
というように事業の継続性を考えたら、社長を挿げ替えるのはよっぽど業績が低迷したときなどの限定された状況で、立て直しできたらまた生え抜きにさせ、会社の理念を全うさせるべきです。

もしくは出向させたら10年は居させるというようなスタンスで臨まなければ
子会社としてはもちろん、グループとしても不利益しか生じないでしょう。

コメント

このブログの人気の投稿

Stories 5話:今までの経緯を知らないまま、運用設計をする

社内のコミュニケーションを活性化!グループウェア導入のススメ

ITにどう向き合う?どう向き合ってもらう?