社内SEに必要な能力:枯れた技術と新しい技術のどちらにもアンテナを張れる

理想とする社内SEというか、求められる社内SE像というのは、
日々の暮らし方が難しいです。
というのも、導入済みのシステムに対しての造詣を深める一方で
新しい技術にも手を伸ばしていく事を求められるからです。
それは社内SEという存在が、その会社にとって唯一のIT世界との窓口だからです。

どんな新しい技術が世の中に出回っていて、それが他の企業においてどういう効果をもたらしているか?
自分たちが既に使っているシステムのその先に進んだシステムがリリースされ、それがどういったものか?
といった事は社内SE以外に仕入れることができる人は会社にはいません。
その為、展示会や企業の新製品の説明会などに参加したりをするのですが、この行為自体は直接生産性を上げる活動ではないため、経営側からするとイマイチな反応しか返ってこないこともあります。

もちろん、会社として
新しい技術なんて興味なし
永遠にこのシステムを使っていく!(そんなことは不可能ですが)
というスタンスでいるのであればそれでもよいですが
それはおそらく会社にとっても、所属する社内SEにとってもあまりいいことではありません。

実際に社内SEをやっていくなかで
現在稼働しているシステムに習熟する
世間に新しくリリースされた技術をキャッチアップする
この二つの両立が如何に難しいか
という事と共に、
経営者側としても
社内SEが新しい技術にアンテナを張っていないと何が起こるか?を書いてみます。

まず、
運用保守をしながら新技術のキャッチアップをすることが如何に困難か?
という点ですが、これはシンプルな話で、
運用保守をしてるだけで忙しくて時間が取れない
インシデント(事件)の発生が時と場所を選ばないので、まとまった時間を確保しづらい
という2点に集約されると思います。

①については、IT部門の宿命ともいえますが、仕事の主導権を握っているのがIT部門ではなく、業務部門であるという事が原因の一つです。
つまり、自分たちで仕事量のコントロールがしづらいという事です。
業務側の仕事のサイクルでインシデントが発生し、それをIT部門に投げてくる為、
基本的に仕事に対する姿勢が受け身になりがちになってしまうので、コントロールするといっても限界があります。

経営陣がITに対して理解があり、IT部門の社内的立場をある程度保証してくれているような会社であれば、次々と投げ込まれてくる仕事の優先度をIT部門の方でつけて、優先度の低い課題に対しては後回しにする。(=業務部門に我慢してもらう)という事が可能になりますが、
多くの企業ではIT部門をただの間接部門としか見ていないことが多いので、そういった意志入れが許されないことが多いのではないでしょうか。
また、これに加え、IT部門が1に対して、業務部門はNという比率になってしまうので
インシデントは同時多発的に発生するけれど、それに対処する場所は一か所しかない為、どうしても多忙になりがちです。

②については、システムに対するトラブルはいつ何時起きるかわからない為、新技術をキャッチアップしようとしても、頻繁に邪魔されるため、一向に進まないという事です。

昨今でいうとリモートワークを実現しようとしても、従業員の全員がスムーズに対応できるわけもなく、
「家のネットワークにつながらないんだけど・・・」
とか
「家のパソコンから印刷できないんだけど・・・」
とか
「昨日まではログインできてたのに、今日はできない」
など、そういった粒度の質問もIT部門に飛び込んでくるため、一つ一つに対処していると、まとまった時間が取れません。
新技術というのはその専門家である社内SEにとっても未知の世界の話ですから、
ある程度まとまった時間をもって、集中して臨む必要があるのですが、それを小刻みに中断されてしまうと、どうしても理解が進みません。

そして最後にこういった事態が
会社としてどういう不利益を生むか?
という点についてですが、
時代に取り残された結果、システムの切り替えの時の、外の世界とのギャップが開きすぎてキャッチアップが出来なくなってしまう。

という事が起こります。
例えば
windows98が安定していて、使い慣れているから、ずーーーーーっと使っていて、とうとうMicrosoftがサポート対象外にしたのでWindows10に切り替えようとしたら、今までwindows98で使っていたソフトが軒並み使えなくなって、業務の半分ぐらいが一斉に出来なくなった。そもそもWindowsの使い勝手も全く変わってしまって、何もできなくなった。

という事が起こりえます。

「うちはスクラッチ(自前で開発したオリジナルシステム)でシステム作ったから、世間の時代の流れとか関係ないよ」
と思っている方々にも影響はあります。
システムの切り替えのタイミングは必ずやってきます。
例えば
会社の規模が大きくなって、今のままのシステムでは限界がでてきた
上場することになって、このシステムでは上場の要件を満たさない
システムの維持費をもっと安く済む方法が世の中に出てきた
等です。そうすると、
自前のシステムを作ったプログラミング言語が古すぎて、もはやだれも使う人がいないので、既存の機能がわからない
とか
動いてるサーバーが古すぎて、他のサーバー(クラウドとか)に持っていく方法がややこしい
とかの現象が起きます。

こうなると、想像していた以上に大きなお金が必要になったりするので、
計算してみたら、少しずつアップデートしてた方が
お金も苦労も少なく済んだ。
なんてことが普通に起こりえます。

このように、直接的には生産性には結びつかないものの、
新しい技術をキャッチアップしていくという事は
会社のシステムをメンテナンスしていく上でも非常に重要な仕事になります。

経営陣からすれば
新しいシステムへ切り替えるなんて、時間もお金もかかるし、
それによってどれだけ生産性が上がったかなんて計測もしづらいし
従業員からは不満が勃発するし、可能であればやりたくない
というのが本音だと思いますが、
それはメンテナンスをしないと決めた高速道路を走り続けるのと同じです。

いつかはアスファルトも荒れ始め、高速道路とは名ばかりでスピードが出せない道路になってしまいます。
しかし、そこから何とかしようとしても、橋脚から傷んでしまっているので、作り直すには莫大なお金がかかり、そんな出費をしたら会社は傾いてしまう。
こうなるともはやにっちもさっちもいきません。

高速道路に乗ると決めた以上、途中下車はできず
道路の不断のメンテナンスは避けられない以上、
会社としてシステムに恒久的に投資をしていくのは
今の時代避けられないことと理解し、社内SEの活動に理解を示し、
彼らをサポートすること。
もちろん、彼らがその活動をしていなければ、するように促すこと。
これが経営者側に求められることだと思います。

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